会長挨拶


石油技術協会 会長 小寺 保彦

【2024年1月】

2024年は能登半島の大地震で始まり、波乱の幕開けとなりました。この地震で犠牲になられた方々には、心から哀悼の意を表します。また、被災された皆様には、一日も早い日常の回復を心よりお祈り申し上げます。

会長就任から1年半余りが過ぎました。就任当初のメッセージを振り返ると、まず、エネルギー事情を取り巻く地政学リスクは、中東での新しい事案により一層大きくなり、我が国へのエネルギー安定供給に甚大な影響を与えかねない事態が続いています。また、カーボンニュートラル(CN)社会への移行については、昨年、我が国でのCCS事業の開始時期を2030年と想定した「先進的CCS事業」が選定され、CNへの取り組みは一気に加速した感があります。その中で、二酸化炭素の地下貯留の分野において、石油天然ガス開発事業で培った地下構造の解明・地下流体の挙動把握の技術を有する当協会所属の技術者の社会的使命と周囲の期待は一層大きくなっていると言えます。

上記の事業環境の変化を踏まえ、当協会では、昨6月に以下のビジョンを新たに制定いたしました。「石油・天然ガス開発は、重要かつ高度な技術の蓄積によって成り立っており、それに関連する技術は、エネルギーの安定供給を果たす上で今後も不可欠なものである。さらに、石油・天然ガス開発において培われた技術は、地熱開発やCCS等地下流体を扱う分野で応用されており、石油開発技術者は、カーボンニュートラル社会の実現のために必要な新しい分野での技術開発においても、貢献することが期待されている。このような背景の下、石油技術協会は、協会員が従来からの石油・天然ガス開発技術を継承・発展させるとともに、それらの技術を石油・天然ガスに限らず地下構造・地下流体を扱う様々な分野へ応用する場面も見据え、協会員に対し、これまでの枠を越えた分野との交流の機会を提供し、必要な技術の獲得に役立つ情報・意見交換および人材育成の場を設けることを使命と考える。」

これは、2030年頃までを見据えた将来像であり、当協会の当面の活動の指針となります。これに基づく新たな活動として、昨年9月にCCS分野の委員会として「CCS委員会」を新設しました。CCSは地下貯留だけでなく、その川上の分離・回収、輸送も含めて初めて成り立つ事業ですが、まずは当協会の強みである地下に関する技術を活かす形でCO2地下貯留の分野を中心に活動を始め、将来分離・回収、輸送分野への交流も拡げていく所存です。

イノベーションに「知の深化」と「知の探索」が不可欠とされることに準えると、石油技術協会は、委員会活動を中心に講演会、シンポジウム、投稿論文・報告を通じて、各技術領域における最先端の知見を共有し、これらをさらに発展させており、まさに「知の深化」を促す場であると言えましょう。
また、昨年度はCCS分野への取り組みを拡大する中、石油天然ガス業界以外からも新たに会員を迎えました。ビジョンにあるように、CCS分野に代表される新分野・新産業へ進出する局面では、異業種・異分野の方々とのネットワーキングとコラボレーションが重要です。これらは「知の探索」を行う上での鍵となり、当協会は、それに必要なプラットフォームを提供できる組織です。人々が出会い、情報や意見を交換する仕組みが既に整っていることから、このプラットフォームをぜひ活用いただけたらと存じます。

当協会は、2023年に創立90周年を迎えました。その記念式典は本年6月に東京大学本郷キャンパスで開催予定の総会後に行う予定です。また、記念事業として、CCSに関する出版物を発行する予定です。

今後とも当協会へ変わらぬご支援とご協力を賜りますよう心よりお願い申し上げます。

 

【2022年6月】

このたび石油技術協会の会長を務めさせて頂くことになりましたJX石油開発株式会社の小寺保彦でございます。 当協会の会長の職に就くに当たり、その責務の重大さを痛感するとともに、その大役を見事に果たされた前会長の岩田様に敬意を表する次第です。

過去2年間を振り返りますと、この期間は、コロナウィルス感染に翻弄され、当協会の活動も対面からリモートへと切り替えざるを得ず、協会員どうしの交流の形も大きく変わりました。こうした状況の中、当協会ではライブ配信・オンデマンド配信を取り入れた講演会等を試行錯誤しながら行ってまいりました。幸いにも2022年6月にはコロナ感染状況が落ち着き、3年ぶりに実開催を伴うハイブリッド形式での総会・春季講演会が開催でき、誠に喜ばしい限りです。今後はコロナウイルスの感染拡大を警戒しながらも、同時に物事を進めていこうとする所謂ウィズコロナの時代となります。先の総会・春季講演会が、ウィズコロナに向けた協会運営の第一歩となるものと思います。今後もリモート技術を活用し、より充実した活動を行ってまいりますので、協会員の皆様におかれては、当協会への一層のご支援とご協力を賜りたく宜しくお願い申し上げます。なお、併せて、当協会の業務の効率化と収益改善にもスピード感をもって取り組む所存です。

最近の石油開発業界の事業環境変化として、脱炭素・カーボンニュートラル社会への移行がございます。従来からCCS/CCUSや地熱開発分野では石油開発の基礎技術が応用されてきておりますが、2020年10月末に当時の菅総理が「2050年までにカーボンニュートラルを実現」という所信表明を行って以来、我が国の企業・大学は脱炭素・カーボンニュートラルへの取り組みを一気に加速しております。当協会でも、2021年秋の「脱炭素社会への移行に向けた石油開発産業の課題」と題した講演会などで、最近の事業環境変化を取り上げておりますが、今後も一層激しさを増すと思われる時代の変化に応じたテーマに取り組んでまいりたいと存じます。

2022年になってからは、世界の地政学リスクが大きく変化する事案が起こり、現在まで収まる気配がありません。最近になってエネルギーの需要と供給の構造が大きく変わり、経済状況にも甚大な影響が出始めております。また、必ずしも国際情勢に依らない電力不足も顕在化してきております。このように世界的なエネルギー安定供給と我が国のエネルギー安全保障の確保が国民レベルで強く意識されている中、石油天然ガス開発事業をもう一度見つめ直し、脱炭素などへの動きとどのように調和を成し遂げていくかが石油開発業界の大きな課題となっております。

当協会は、2023年に創立90周年を迎えます。長い歴史の中で培った技術をさらに発展させると共に、大きな時代背景の変化を議論できる場を積極的に設けて行きたいと存じます。そのために、これまでの枠を越えた分野の方々との交流を実現したいと考えております。

最後に、協会員の皆様に、倍旧のご指導・ご鞭撻をお願いいたしまして、会長就任の挨拶とさせていただきます。何卒宜しくお願い申し上げます。
 

石油技術協会 会長
小寺 保彦