ベネズエラ石油 油田再生事業の運営
岩上義彦(ベネズエラ石油)・朝山肇(帝国石油)  
Rehabilitation of Oil Fields in Venezuela: Yoshihiko Iwakami & Hajime Asayama


1.緒言


ベネズエラは1992年より中長期石油増産計画の戦略に基づき、石油・天然ガスセクターの外資導入キャンペーンを始めた。これは、当時250万バーレル/日であった原油生産量を2006年には、620万バーレル/日にするという大増産計画であった。本年2月に大統領が交代してこの計画がややスロ−ダウンする兆しはあるものの、ベネズエラは世界有数の原油・ガスの埋蔵量を誇り、今後も目を離せない地域であることに変りはない。

上述の増産計画を支えるのが外資の導入である。この外資導入には自国内の資金だけでは計画を達成できないという理由があるが、それに加えて、ベネズエラ国営石油(PDVSA)という大組織の行き詰まった体質は内側からだけでは変えていけないため、外圧を利用して変えて行こうという背景があることも忘れてはならない。世界的な規模で競争が激化する中、これまでのような大企業の旧態依然としたメンタリティ−では、競争に勝ちぬいていけないという危機意識によるものである。

外資導入が既存油田の再生化サービス事業として始まった時、早くからベネズエラに着目していた当社は果敢に入札に参入し、イーストグアリコ、サンビグエレの2ユニットの獲得に成功している。本稿では、両油田の操業を通して得られた知見及び経験を基に、リハビリ事業のキーポイントは何か、またそれに対してどのようにアプローチしているかという点について論ずる。



2.リハビリ事業のキーポイントとは


これまで両プロジェクトでは、既存エリアのWS/WO或いは開発井の掘削によりベ−ス生産量を確保しつつ、鉱区内の未探鉱エリアの試掘を実施してきている。これにより生産量は PDVSAから油田を引き受けた際の1500バーレル/日より約10000 バーレル/日に増加した。

しかし経済情勢の変化が、大幅なローカルスタッフの賃金上昇及び各種サービス契約、資機材の高騰を招いており、また、原油価格の低迷もプロジェクトの採算を悪化させている。

ベネズエラに限らず世界各地でリハビリ事業が行われているが、このような油田が開放される背景としては一般的に以下のような理由があげられる。


従って、リハビリプロジェクトではいかに安い操業費($/bbl)を実現できるかが重要であり、それを達成できるような体制を構築できるかどうかが当に鍵となる。プロジェクトの採算性を考えると日本人の数は自ずと制限され、実務ではローカルスタッフの比重が大半を占める。よって、株主(日本)の資金をどう使うかという意志を伝え、その枠内で有効に予算を組み、忠実に実行していくという仕組みが必要となる。本プロジェクトの場合ローカルスタッフの大半は長年大企業の中で育ってきた元PDVSAの従業員であるが、PDVSAと同じ方法で操業をしていたのではなかなか利益を上げるのは難しい。このローカルスタッフのメンタリティーを改造し、リハビリに適した人材に仕上げて行けるかどうかが重要なポイントである。ここで述べるメンタリティーに関係する要素として、以下のようなものが挙げられる。



3.ベネズエラプロジェクトの組織運営

本プロジェクトでは、現在組織改革を含めた一連の改革を実施、或いは計画中であるので、その内容について紹介する。


(1) 組織の最適化


リハビリ事業で成功を収めるためには、できるだけ少ない人数で操業を行うことが基本である。本プロジェクトでは、開始当初2つのユニット(鉱業所)の事務所が約200 km離れており、また作業量が多かったこともあり、それぞれの事務所に事務系、技術系のほとんどの部門を独立して備えていた。これを改善するために、効率化とマルチタスクの考え方を取り入れ、具体的には、第一段階としてマネ−ジャ−のボックスを減らすために、両鉱業所の同一部門を1人のマネジャ−が兼務するという形にした。
次の目標は、各階層においてマルチタスクを進めることによる組識の縮小化であり、社長から、一般スタッフ間の現在の階層を1段減らす、または技術部門、事務部門の統合がなどを考えた。



(2) 人事管理

(1)のスリム化した組識を構築するためには、各人のレベルアップと、それを評価するシステムが不可欠となる。当社も含めベネズエラの多くの企業は、これまでも各人の評価を基準に、給与を決めていたが、比較的緩やかな人事管理が採用されてきた。しかし当社ではこれを改め、目標を設定し、その達成の程度が給与に反映される成果主義を取り入れ、それに合った賃金体系にすることを計画している。この賃金体系の特徴は以下の通り。


(3) 社内プロセス

どのプロジェクトにも共通であるが、リハビリだけでなく資金のコントロ−ルもまた重要な柱である。このために当社では以下の2つの社内プロセスを設けてある。


@予算管理

毎年設定した予算内で、仕事が完工できるように、支出の面からプロジェクトをコントロ−ルするものである。各予算に対して、既支払額、オ−ダ−済み、予算残が簡単に把握できるようなシステムになっており、予算を超えるオ−ダ−は受け付けない仕組みとなっている。


A権限規定

作業を実施するにあたっては、資材或いはサ−ビス業者を通例使うので、そこに契約が発生する。その際、どのポジションの人間の承認を要するかという決まりが必要となる(権限規定)。当社では、株主の意向を汲み取り、お金をどう使っていくかを判断する予算の編成/執行と業務を効率よく遂行することを境界として、権限を分けている。