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生産情報による油層キャラクタリゼーション − 自動ヒス卜リーマッチングの可能性と課題
登坂博行(東京大学)、増本 清(島根大学)
Reservoir Characterization through Historical Well Performances-Possibility and Problems for Automatic History Matchig : TOSAKA Hiroyuki and MASUMOTO Kiyoshi



1 はじめに

油田開発における生産子測の確からしさはヒストリーマッチングの確からしさに強く依存することは論を待たない。ヒストリーが長く、生産情報(井戸での生産・圧入量、坑□・坑底圧力、WOR、GOR)の最と質が十分であればあるほど、ヒストリ一マッチングによりキャラクタライズされた油層物性分布は的確で、それによる将来子測も信頼性を持つと信ぜられる。しかし、この作業においては、基本変数(浸透率や孔隙季)を試行鋳誤によって入れ変え多数回のシミュレーションランを実行するため、ヒストリーが豊かであるほど、納得できるマッチングは困難を極めることも多い。

ここでは、ヒストリーマッチング作業の一部分或いは大部分をコンピュ一タに頼る“自動ヒストリーマッチング”或いは“自動逆解析”と呼ばれる技術の概要を述ぺると共に、その可能性と課題について説明する。


2 自動ヒストリーマッチングの手続き

油層ヒストリーマッチングは、複数の坑井での生産情報を再現するような未知変量(浸透率、孔隙率など)の分布を出すのであるが、人間が領域全体を見渡しながら整合的に修正してゆ<ことは、一般的には不可能となることが子想される。これに対し、自動ヒストリーマッチングは数学的な意味で最良マッチング点を求めようとするもので、プラックオイル型シミュレーションでは次のような目的関数の最小点を探すことに対応する。


    (1)


ここで、Pは庄力、WはWOR、GはGORであり、は重み、tがついたは時間に関する和、Nwがついたものは井戸に関する和である。上記目的関数は全領域の浸透率や孔隙率の非線形関数であり、その最小点(極小点)を求めるためには反復計尊が泌要である。このような問題は逆問題と呼ぱれ、その解法に閥する研究は様々な分野で行われており、3成分3相プラックオイルシミュレーションに対する適用性まで検討されている。碁本的には、順解析(普通の油層シミュレーション)と非線形最小2乗法およぴ最適制御理論の組み合わせにより反復的に解を求めるものである。このような数学的プロセスの具体的な手順と方法に関しては当日報告する。


3 自動ヒストリ−マッチングの可能性と課題

計算機が自動的に解をはじき出す、というと魅力的に思う人と逆に技術者を不要とする非人間性を感じる人もいよう。計算機スピ−ドが飛躍的に大きくなった現在では、それも夢ではないのであるが、実際にはそれほど簡単ではない。自動化は色々な可能性と課題を合わせ持っている。そのメリットや可能注としては次のような諸点が考えられる。

(1) 従来の人間が行うヒス卜リーマッチングにおける補助情報の提供ができる可能がある。この形での実用化はまもなくであろう。補助情報とは、目的関数に対する油層内各点のセンシティビティを算出し、技術者が物性分布を変える判断の指針を提供するものである。(2) 油・水2相状態の油層条件下で、まず圧力のマッチングを行う場合には、すでに実用的な規摸の油層モデルに対し、全自動ヒストリーマッチングは可能な段階と考えられる。ヒストリーが長けがければ、数千個の未知浸透率を逆解析する事も可能である。 最小化プロセスを適用した時、目的関数の減少が遅い、或いはあるデータに対し計算値が観測値に近づかないなどの現象が見られた時には,離散化の仕方,境界設定,初期設定の仕方など油層モデル自体の不具合、データ自体の良否が問われており、早期の見直しが可能となる。人間の行うヒストリーマッチングでは、一度作ると何が悪いかわからないままなかなか元まで作り替える勇気が湧かず,長引くことになる。

我々がこの技術を開発・利用して行く上での課窺を挙げるなら以下のようなものであろうか。

(1) 2相系でのWOR,GORマッチング、遊離ガスの存在する3相系での全自動化は数学的には可能であるものの、実際的には計算量の大きさ、収束の悪さなどの未解決の問題があり、実用化にはもう少し時問がかかるだろう。

(2) 情報量と逆解析可能性の関係の究明が必要である。ある時点で持っている生産情報によって、どの程度の範囲が、どの程度の細かさでわかるのかはヒストリーマッチングを人間が行う場合も計算機が行う場合も知っておきたいことであるが、これは明かではない。一般にに、大規槙なフィールドシミュレ一ションでは、生産情報量よりも格子数の方がずっと多い不定問題となっている可能性が強く、未知数はゾーニング、スムージングにより少なくせざるを得ないが、その仕方自体が人聞の意志に左右されるのは問題である。

(3) 大規摸な油層モデルを組んでヒストリーマッチングを行うとき、ただ一つの正解というのは有り得ないであろう。人間がやっても計算機がやってもそうである。目的関数は多次元の面であり、それは多数の極大、極小点を持つことが予週される。収束点は出発値により異たることは技術者として心配になるところである。解の自然らしさ、優劣を検定するため何らかの判断手法・基準が必要かも知れない。


4 おわリに

現在,生産技術委員会において油層逆解析技術分科会が設けられ、関連各社より10名程度が集まり文献の収集・輪読などを行い活動中である。興味のある方の積極的な参加をお待ちしている。


参考文献

登坂博行、増本 清(1993):自動ヒストリ−マッチングによる貯留層キャラクタリゼ一ション・石油技術協会誌、第58巻6号、494-501.


Yang P.H and Watson, A.T.(1988):Automatic with variable metric methods, SPEJRE, pp.995-1001.

EM. Makhlouf, W.H. Chen, and J.H.Seinfeld(1990):A general history marching algorithm for three phase, three-dimensional petroleum reservoirs, SPE20383.

T.B. Tan and N.Kaiogerakis(1991): A fully implicit, three-dimensional, three-phase simulator with automatic history-matching capability, SPE 21205.