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天然ガス利用技術と環境との調和
寺崎太二郎(東京ガス)
Utilization of natural gas taken thought of influences on global environment : Daijiro Terasaki


1.はじめに
COP3をきっかけに天然ガスの存在が大きく見直されようとしている。1996年の日本石油開発の一次エネルギーに占める天然ガスの割合は11.9%で、石油の53.8%は勿論、石炭の17.6%、原子力の15.3%と比較して未だ少ない。また、1995年に輸入されたLNGの73%は発電用、27%は都市ガス原料として使われ、同年における都市ガス原料中天然ガスは81%であった。今後、炭酸ガス排出量の少なさから相対的に天然ガスの地位が高くなって行くことは必死であり、原子力の見直し、石炭火力から天然ガスへの転換等、エネルギー需給構造の再構築が図られて行くものと見られる。ここでは天然ガスを燃料、あるいは化学工業用原料として利用する緒技術の中で環境問題に貢献するものについて紹介したい。
2.燃料として利用する技術
(1)コージェネレーション(熱電併給)
コージェネレーションとは1つのエネルギー源から熱と電気など2つ以上の有効なエネルギーを取り出して利用するもので、熱のカスケード利用(多段階利用)システムの1つである。エネルギー利用効率の高さ、一般商用電源と都市ガスボイラーを併用するものと比べた炭酸ガス排出量の少なさ、電力負荷平準化に対する貢献、といった良さがある。以下にコージェネレーションに関連した緒技術について示す。
(a)燃料電池
燃料電池は
水素と酸素の電気化学反応を利用した発電システムでリン酸型、溶融炭酸塩型、固体電解質型等がある。反応時には熱が発生するのでこれを回収して利用することができる。大気汚染や騒音がないこと等から理想的なコージェネレーションシステムと言われる。
リン酸型燃料電池は実用化に最も近く、コージェネレーションタイプの量産試作機を中心に本格的市場導入のためのフィールドテストが実施されている。ガス事業者が行っている開発・試験機はフィールドテスト機を含め1997年3月末で57台、9550kWである。溶融炭酸塩型は1MW級のパイロットプラントが建設され、98年度には発電試験が行われる予定である。一方、固体電解質型燃料電池はセルの基礎研究、25kW級の評価試験が行われている段階である。
(b)セラミックガスエンジン
ガスエンジン・コージェネレーションの効率をさらに高めるために日本ガス協会がエネ庁より補助を受け、93年度より98年度までの計画で開発が行われている。熱効率50%、発電効率46%、Nox排出値40ppmの性能を有する200kW級ガスエンジンの開発をめざして、高圧縮比ディーゼル燃焼エンジン、窒化珪素をベースとした伝熱伝導、低摩擦、高強度・高靭性セラミック材料、尿素脱硝触媒・直接分解触媒、等に関する研究が行われている。本システムは、熱電比が小さく冷却水が不要であり、しかも排熱を全量蒸気で回収出来るため、事務所ビル等の小さい民生用用途への適用が期待されている。

(2)ガス冷房
ガス冷房の普及は夏季の冷房需要に対する電力ピークの緩和策として国全体のエネルギー需給にとって好ましいものである。また、ガス冷房用吸収冷温水機はフロンを使っていないことから環境面からみても優れていると言える。1997年におけるガス冷房設置容量は650万RTである。10,000m2以上の新築ビルにおけるガス冷房のシェアは約60%を占めるが、家庭用ガス冷房機のシェアは極めて低く、新たな機器の開発が鋭意進められている。

(3)自動車用燃料
硫黄分を含まないクリーンさから天然ガスは発電用燃料として長年使われてきたが、最近では炭酸ガス排出量の少なさ、Nox・粒子状物質生成量の少なさから自動車用燃料としても普及が図られている。

(4)未利用エネルギーの有効活用
ゴミ焼却排熱、低温排水等の未利用エネルギーを有効に活用するために天然ガス(都市ガス)が利用されており、1996年6月で8件の実績がある。高温のゴミ焼却排熱等は熱交換器で回収され、都市ガスは補助熱源として使われる。また低温水等は吸収ヒートポンプ熱源に利用され、都市ガスは駆動源として使われる。最近はスーパーゴミ発電が注目されているが、これは都市ガスの燃焼によりガスタービン発電を行い、その排熱でゴミ焼却設備から発生する蒸気をさらに高温化して蒸気タービン発電を行うもので全体の効率が10%前後高くなる。

3.化学原料として利用する技術
(1)液体燃料化
天然ガスより先ず合成ガス(CO、水素)を作り、さらに合成ガスからメタノールやジメチルエーテル、あるいはフィッシャー・トロップッシュ反応による灯油・軽油などの高級炭化水素が製造できる。最近、これらは小規模ガス田からの天然ガス油層媒体として脚光をあびているが、不純物を含まないクリーンさや燃焼特性の良さからその消費先として自動車用燃料、発電用燃料、民生用燃料等が考えられている。
燃料用メタノールの実用化に向けて、大型化・低コスト化技術開発が国家プロジェクトとして93年度から実施されている。また、高級炭化水素(GTL)の生産技術はほぼ商用化の段階にあるとみられ、商用プラントの建設のニュースが流れている。さらにジメチルエーテルについては民生用LPG代替、自動車用燃料向けとして期待され、合成ガスより一段でジメチルエーテルを製造するプロセスの開発研究が国家プロジェクトとして97年度から実施されており、これらの成りゆきが注目される。

(2)13C同位体分離
天然には13C・12Cの炭素同位体が1.1:98.9の比で存在している。天然ガス中のメタンもその1.1%は13Cの炭素からなるメタンということができる。13Cメタンと12Cメタンの沸点差は0.03℃であるが、数千段の低温蒸留によりわけることができる。13C化合物は医療診断薬としての用途があり、今後の発展が期待されている。


Profile

  1. 氏名:寺崎 太二郎 (てらさき だいじろう)

  2. 所属:東京ガス株式会社 技術企画部 原料多様化技術プロジェクトグループ

  3. 講演概要

    COP3をきっかけに天然ガスの存在が大きく見直されようとしている。1996年の日本の一次エネルギーに占める天然ガスの割合は11.9%に過ぎないが、今後炭酸ガス排出量の少なさから相対的に天然ガスの地位が高くなって行くものと見られる。ここでは天然ガスを燃料、あるいは化学工業用原料として利用する緒技術の中で環境問題に貢献するもの、例えばコージェネレーション、ガス冷房、未利用エネルギーの有効活用、液体燃料化、等の現状を紹介する。


  4. ポイント

    ・天然ガスは21世紀の中心となるエネルギー資源である。
    ・貴重な資源を有効に活用するため様々な利用技術が開発されつつあるが、コージェネレーションは最も重要な技術といえる。