| 世界各地の石油開発におけるアライアンス契約の適用と方向性 |
1.背景
1980年代半ば以降の原油価格の低迷により、世界の石油会社の多くは、事業収益が悪化したが、一方で、低油価の中での事業の合理化、事業採算性の改善を目的とした様々な施策が検討されてきている。その一つが、探鉱、開発及び生産活動に関するコストの削減であり、その具体的な内容をあげると、
等があり、特に欧米のメジャーを中心に積極的に取り組まれている。
2.契約形態の変化
石油会社とコントラクター及びサービス会社との契約関係については、従来は、発注者と受注者の立場が明確であり、往々にして発注者である石油会社の立場が強かったが、コスト削減に際しての一方的な発注額の削減によるコスト削減は、コントラクターの意欲を削ぎ、結果として成果物の質の低下を招くこととなった。
このため、第二段階として、坑井掘削におけるターンキー契約等に見られるインセンティブ契約が取り入れられたが、コントラクター側における作業の効率化の効果は得られたものの、石油会社を含めた事業全体の効率化にまでは至らず、その後、更に石油会社とコントラクター及びサービス会社等が、相互に協調、補完しあい、両者が一体化して事業を効率的に進めるAlliance契約等の概念が生まれてきた。
3.Aliance契約の基本概念
新しい契約概念の中で注目を集めているAlliance契約について、その基本的な考え方は次のとおりである。
@プロジェクトを効率的に管理する単一組織
A仕様変更、関連資料作成等の削減
A統一基準、装置の共有化、共通仕様化による費用圧縮
C石油会社とコントラクター間の人員の重複排除
4.Gain Share
Alliance契約においては、リスクと報酬の関係(Risk/Reward Criteria)を明示し、最終到達目標とこの目標を達成することによる利益分配の方法を含むGain Shareの概念を論理的に構築しておくことが重要である。
また、Gain Shareの基本は、コスト削減効果、スケジュール短縮効果、パフォーマンス向上等の結果に対して、石油会社及びコントラクターが対等の立場で与えられることであり、作業に注ぎ込んだ人員や装置の数により決められるべきものではないという点である。
また、利益共有の基準は、目先の投資規模の軽減に止まるべきではなく、最近の成功事例においては、開発投資、工期、施設能力、操業の効率化及び安全性等を含めて総合的に決定されている。
Alliance契約を含むインセンティブ契約での報酬配分には様々な方法があるが、通常、固定式(Fixed Fee)ないし事後精算方式(Reimbursable)が用いられている。また、参加者の経験や専門的な知識を必要とする場合には、パフォーマンス方式(Performance Base)が適用されている。

図:Alliance契約の概念
5.パートナーの選定
Alliance契約における最も重要な要素であるパートナーの選択に関しては、 Beast in Class 若しくは Pre-formed Alliance による入札形態がある。
Best-in-Class は、作業のフェーズや種類別に入札を行い、それぞれの分野でのBest oneを選定した後で、石油会社がこれらを統合する方法であり、石油会社の負担は大きいものの、個々の分野で最も優れたパートナーの選択が可能である。
一方、 Pre-formed Alliance は、プロジェクト全体を一括して入札するもので、最初から意見統一された集団としてのコントラクターグループが応札するものであり、構成メンバー間の調整の負担が軽減される。
6.プロジェクト実行組織
Alliance契約によりプロジェクトを実施する実行組織に必要な要件は、以下のとおりである。
Alliance Team
7.東南アジア・オセアニア地域への適用
Alliance契約は、欧州北海及びGulf of Mexico等を中心に広められてきたものであるが、その背景には、油価低迷にともなう欧米系石油会社のリストラにより、プロジェクト関連の人材が社外へ流出しており、こうした人材をAlliance契約により手配することにより、石油会社とコントラクターの企業の垣根を越えた信頼関係の醸成が容易であったこと及びこれらの地域においては、石油契約上、Incentive等の導入に障害が少なかったこと等があげられる。
一方、我が国の石油会社がオペレーターシップを取る機会の多いアジア・オセアニア地域においては、その導入が遅れている状況にあり、具体的な事例としては、タイのPailinガス田やオーストラリアのWandoo油田等があげられる。
こうした背景の大きなものとしては、まだまだ低価格思想が優先され、Incenive付きのIntegrated Service契約やAlliance契約の適用が認められていないこと等があげられる。
しかしながら、こうした地域においても徐々に契約形態の見直しや実施体制の見直しによる事業の合理化への関心が高まってきており、個々の国々の事情を反映した独自のシステムが出来上がっていくものと考えられる。