| アブダビ巨大油田における水平井を活用した油田再開発の事例 |
はじめに
ジャパン石油開発株式会社はアラブ首長国連邦アブダビ沖で1970年代より、現地操業会社を通していくつかの油田の開発・操業に関与してきている。それらの油田のうちから、1982年末の生産開始以降、段階的な開発を経て数度の開発計画の最適化を実施した油層の事例を紹介する。
紹介する油層はLower Cretaceousの炭酸塩岩からなる。本油層の浸透率は比較的低い。浸透率は高い所で約70md程度、低いところでは1md程度である。本油層は集油面積の広がりが東西50km、南北30kmと大きく、端水層からの圧力供給が十分ではないため、 5点法と周辺水圧入法よりなる水攻法を開発当初より適用してきた。
ここでは本油層で水平井が@原油生産能力の向上 A油層頂部における垂直掃攻効率の改善ならびに含水率削減 B油層翼部における原油回収増進ならびに油層圧力サポート改善、そして C低浸透率区域におけるガス攻法に用いられた事例を紹介する。
原油生産能力の改善
本油層においては水平井の生産レートは平均して垂直井の約2~3倍になっており目標生産レート達成に大きく寄与している。水平井の掘削費は垂直井に比較して約1.5 ~ 2倍になっているが生産量増し分が大きいため、経済的には十分見合っている。
掃攻効率の改善
本油層では水攻法を開始して約10年後に、圧入水の生産井へのブレークスルーが初めて観測された。その後、ブレークスルーが観測される坑井の数および産出水量は次第に増加してきている。初めて圧入水ブレークスルーが観測されて以来、高分解能電検、コア分析、PLT、PNL, b ・g トレーサーそして定期的な含水率測定等、以前に増して綿密な油層モニタリングプログラムが立案・実施されてきている。その結果、油層内の垂直方向の浸透率分布が非常に不均質であり、主として油層上部に存在するいくつかの高浸透率層が流体の流れに寄与しており、圧入水はそれらの層の中をスランプせずに走っているということがわかってきた。
本油層ではこれらの結果を鑑み、水平井を用いて油層下部に存在する低浸透率層の生産に対する寄与を向上させる試みが続けられてきている。水平井は1989年に本油層で第1坑を掘削して以来、掘削技術の進歩と共にその形態を、シングルラテラル、デユアルラテラルそしてマルチラテラルへと進化させてきた。本油層における水平井は裸坑仕上げであるため、特にマルチラテラルにおいては各ラテラルへのアクセスが難しく、均質な酸処理やPLTの降下が難しい。このため、水平井掘削の当初の目的である油層下部の低浸透率層の掃攻効率を改善できたかについては評価が難しく、現在も水平井位置、長さ、ケーシング降下位置等、多様な仕上げ方法を試みその最適化に努めている。
当社はこれらの問題解決のために石油公団開発技術センターとの共同研究で、MLTBS (multi lateral tie back system)の開発、HDDG (High Density Data Gathering)の計画立案を進めている。MLTBSは現在フィールドトライアルを実施中であり、HDDGについてもフィールドトライアルを年内に実施開始予定である。

油層翼部の再開発
本油層翼部においては5点法が未完成であり、油層圧力サポートが十分でなくかつ原油の取り残しが懸念されていた。このため順次油層スタディを実施し、原油回収を増進させ油層圧力サポートを十分にするために水平井を用いて最適化を進めた。
低浸透率エリアの再開発
油田西部には本油田の約1/5の埋蔵量が眠る。しかしながら、この部分の浸透率は約10mdから1mdと相対的に低い。このため、水攻法とガス攻法と浸透率のレンジにより使い分け、これに水平井を適用することで経済性、原油回収率を最大化するべく、現在パイロットテスト計画が進行中である。
おわりに
本油田の開発は主として水攻法により開発されてきた。1989年に始まる水平井の活用により原油生産能力・掃攻効率増加が試みられ、かつ油層周辺部の開発計画も最適化されてきた。近年は低浸透率区域でガス攻法と水攻法に水平井を適用して再開発をする試みが為されてきている。現在は全ての坑井をシングルラテラル水平井とし、本油層の生産圧入能力をさらに増加させる方向で再開発が進んでいる。