21世紀への課題:石油危機から環境危機へ

                               住友金属ビジネス企画(株)

                                   薮下 義文

1.石油危機から四半世紀

〔表1.石油供給途絶の歴史〕

1956 1967 1973 1980 1981 1991
事件 スエズ戦争 6日間戦争 石油禁輸 イラン革命 イラン・イラク戦争 イラクのクウェート侵攻
石油途絶量
(万b/d)
200  200 260 350 330 430

20世紀の最後の四半期に起きた石油危機の解決に13年間を要した。
2度の石油危機により石油価格は18倍、世界の石油探鉱・開発投資額は年間1500億ドルに上った。こうした経済資源の総動員により北海油田が誕生した。新しい資源の発見=イノベーションである。特定商品の高騰という市場メカニズムを通して、自律的に解決された。巨大油田の誕生後、石油の価格はボトル詰めの水より安く、いつでも、どこでも手に入る商品となった。アラビア石油は、日本政府からの2000億円の鉄道建設の投資を得られず、サウジでの石油採掘権を失った。第1次石油危機から27年経った現在のエネルギー供給に不安を感じなくなった国民の意識を反映している。エネルギー・セキュリティーよりも、日本長期信用銀行を国営化するなど、信用危機緩和にプライオリティが置かれるようになった。



2.地球温暖化の考え方

〔表2.IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の予測の石油資源量前提(億バーレル)〕

識別埋蔵量(a 未発見資源量(b ベース資源量(可採(a+(b) 追加資源量
石油 在来型 10、000 4、167 14、167 16、667
非在来型 11、833 15、000 26、833 25、000

地球の気温が21世紀末に2度C前後上昇するには、石油の消費が100年間で3兆バーレル必要。これは地質学者から見ると常識からはずれた前提。



3.環境危機の長期化

 従来の公害対策は、経済成長を確保しつつ、国家統制によって、企業のコスト負担を吸収できる範囲内で汚染を削減し、成果を挙げた。地球温暖化の防止には、経済成長そのものでもあるエネルギー消費の抑制が必要で、しかも、先進国でCO2排出量を削減しても、アジアでのCO2排出の増加量を相殺するには焼け石に水である。

 21世紀に、市場メカニズムを発揮した形で経済資源を総動員し、温暖化防止のできる新しい財貨・サービスの発明が出来るか、環境がらみのイノベーションが起きるか?炭素税を徴収し、政府が補助金に回す形の、非効率的な形でのイノベーション発明はむずかしい。ダイムラークライスラー社は燃料電池を発明し、創業者利得を得られるか?地球温度が上がる前に石油資源が枯渇する可能性もあるが、環境危機は長期化するだろう。排出権取引は、新しい財貨・サービスだが、環境利権確保の一種のナショナリズムの恐れがある。