カナダにおけるOil Sands の開発動向と Upgradingの技術開発
―非在来型資源の開発―
榎本 兵治・木下 睦(東北大学)
Direction of Oil Sands Industry in Canada
and New Technologies for Upgrading:
Heiji Enomoto, Atushi Kishita
1. はしがき
1997年9月、Edmonton においてNCUT (National Centre for Upgrading Technology)主催のWorkshop-Directions in Refining and Marketing
of Synthetic Crude Oil (SCO) and Heavy Oil
が緊急に開催された。これは、SAGDによる Bitumenの商業生産が視野に入ってきて、2005年までにAlberta州周辺で21社が合計109億ドルの開発投資を発表しているが、同年夏にBitumen価格の急落を経験したことが契機となっていた。従って、このままではBitumenの増産によって業界が活性化するどころではなく、市場経済性を失ってしまうという緊張感が会場に満ちあふれていた。
その後油価の低迷もあって予定より遅れているようであるが、CANOS、Gulf,Suncor,AECなどではSAGD project が進行しており、CANOSでは昨年7月より2 pairsによる生産を開始し、ほぼ予定通りの 1800 bbl/dを順調に生産している。また、本年5月よりさらに 3 pairs による生産開始を予定しており、4000 bbl/dを期待しているという。他方、Upgraderについて既存設備の増改設が行われているが、処理能力は十分ではない。特に、数万bbl/d以下となるSAGDの生産規模に対応したUpgrading技術は開発されておらず、これがbottle neckになることが懸念される。
本講演では非在来型資源としてOil Sandsを取り上げ、カナダの場合を例として、その開発動向と新たなUpgrading技術の開発研究について紹介する。
2. Bitumenの生産予測とUpgradingの増設予定
Albertaでは1967年から本格的にBitumenの生産が開始され、十数年の経験を経て、1985年急激に増産へと移行した。 1996年の生産量は45万bbl/dであり、2000年には70万bbl/dが見込まれている。これらのほとんどは露天採掘によるものであったが、今後はそれに地下採収法による生産が加わり、ADOEの予測によると2005年には100〜150万bbl/dに達するとされている。
開発当初からBitumenの殆どはSCOに改質されていたが、1985年の急激増産以降Bitumenのままでの出荷が増加し、1996年においては1/3強がBitumenのまま出荷されており、2000年には半々になる。 2002年までのUpgraderの増設予定はSyncrude, Suncor, Husky 3社の合計で現在の33.7万bbl/dから54万bbl/dの20万bbl/dであり、そのほかでは2002年にShellが15万bbl/dのHeavy Oil用をBitumen用に転換することが予定されているのみである。すなわち、2005年には現在の総生産量と同程度の量がBitumenのまま出荷されることになりそうである。
3. On-site Upgradingの必要性と既存技術の問題点
上述のような採取技術の進展により、またこの1年間の油価の上昇からみても、今後Bitumenの生産は大幅に増加することが期待される。従って、その生産規模に対応した輸送方法と、高品質化処理方法の確立が重要となってきた。前者について、特にカナダでは輸送距離が長いためパイプライン輸送に依らざるを得ないが、IPLのspecを満たすためには希釈に30〜40 vol %のcondensateを必要とし、コンデンセート不足が目前に迫っているため、緊急を要す。また後者については、生産量の増加により、Bitumenのままでは価格破壊を起こすことが危惧されるため、将来的には極めて重要な課題である。さらに、地下採収法では最大数万bbl/d程度で地域的に分散して生産されることを考慮すると、この生産規模に対応したon-site処理方法が望ましい。
Upgrading法として従来から検討されているのは、水素化分解法と熱分解法である。このうち水素化分解法については、以下のような問題がある。
4. SAGD法と一体化したUpgrading法の開発研究
上述の問題点への対応と、さらにSADG法と一体化した技術とすることによって効率化が期待される新たなUpgrading法として、超臨界水を反応溶媒とする方法が提案されている。
その1つは、Upgrading反応に使用する水素を水から供給するために、400℃以上(提案では500℃)湿度でBitumenと水の混合物に酸素を導入し、部分酸化反応によって発生するCOを利用する方法である。この方法による水素供給機構についてはよく分かっていないが、同様の反応条件下で水素ガスを供給してもUpgrading反応にあまり水素ガスが役立たないことから、シフト反応(CO+H2O → CO2+H2)により生成する水素ガスではなく、COとH2Oから水素供与性の中間体(例えば蟻酸あるいは蟻酸イオン)を生成し、間接的に水から水素が供給されているものと考えられている。この方法によるプロジェクト研究が1997年CS ResourcesとNCUTから提案されている。
他の1つは、アルカリを利用する方法である。この方法による水素供与機構も分かっていないが、熱的に分解して生成した低級オレフィンに水が付加して生成する2級アルコールがケトンになるとき放出する水素が高分子化合物の低分子化反応に寄与していることは、ポリエチレンをモデル化合物とした実験で明らかになっている。
これらの方法は、多量のCO2を発生する水素ガス製造プラントを必要としないでけでなく、SAGD法と一体化することによってさらにmeritが生ずる。以下に、後者(水熱改質法と称す)を例にとって説明する。
SAGD法では、例えば280℃の水蒸気を圧入すると230℃の熱水とBitumenが混合状態で採収される。これに僅かのアルカリを添加した後昇圧によってそのまま反応容器に導入し、430℃、300気圧程度の条件で反応させると10分程度でIPLのspecを満足する油になる。反応後、350℃程度の温度で油と水を分離し、熱水から水蒸気を生成させて圧入に使用する。これによって、熱利用の効率化とシステムの簡略化が図れると期待される。この方法の特徴を以下にまとめてみる。
5. まとめ
SAGD法によるパイロット生産は順調に推移しており、Bitumenの生産は今後増加するものと期待される。そのためにはon-siteでの処理が不可欠となろう。超臨界水熱反応を利用する方法はその可能性を有しているのでなかろうか。